オンライン教育プロデューサーの田原真人です。

いきなりですけど、みなさん、クラウドファンディングってご存知ですか?

Wikipediaを引くと、

クラウドファンディング(英語:Crowdfunding)とは、不特定多数の人が通常インターネット経由で他の人々や組織に財源の提供や協力などを行うことを指す、群衆(crowd)と資金調達(funding)を組み合わせた造語である。ソーシャルファンディングとも呼ばれる。

という感じで書いてあります。

これを読むと、

「ふーん。起業家などが、一般の人から資金調達する仕組みなのね」

「なるほど。応援したい人にお金を払うことができる方法なのね」

などと思ったりするかもしれませんね。

実際、多くの人が、こんな感じでクラウドファンディングを捉えているのではないでしょうか。

でも、2年ほど、いろんな形でクラウドファンディングに関わってきたら、全く別のところに大きな価値が存在することに気づいてしまったので、今日は、その秘密をばらしてみたいと思います。

クラウドファンディングの新しい価値に気づいたきっかけ

僕が、最初にクラウドファンディングに関わったのは、NPO法人eboardがReady Forに挑戦したとき。

当時のeboardは、今ほど知名度があったわけではなく、代表の中村さんが動画講義とWebシステムを、ほとんど一人でひたすら作り続けているという状況でした。

Ready Forに挑戦したときに、反応が薄くて、このままじゃ苦戦しそうだなと思い、おせっかいかなと思いつつも、中村さんにメッセージを送って勝手応援団を始めました。反転授業やアクティブラーニングに象徴されるような学びのパラダイムシフトを起こしていこうというときに、eboardがクラウドファンディング達成できないようじゃ未来はないだろうって思ったんです。

「反転授業の研究」で、「それぞれが、どんな想いで応援しているかを連載していきませんか?」と呼びかけました。中村さんには、eboardストーリーを連載してもらうようにしました。

中村さんが内に秘めていたものが、物語形式で外に出てきたことで、応援する人の間に多くの気持ちのシンクロが起こり、いつしかクラウドファンディング達成は、eboardのためだけのものじゃなく、応援者全体の目標となっていきました。

そして、締め切り直前に、一気に達成ラインを突破することができました。

eboardストーリーの連載はこちらから読むことができます。

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達成の喜びを自分ごととして味わいながら、自分は、何に対してお金を払ったのだろうかって考えたんですね。

Rewardの引き換えとしてお金を払ったわけではないのは明らかでした。

今までにない何かが生まれているような予感がありつつも、そこに形を与えられていないようなもどかしさがありました。

一歩を踏み出したい人たちと共創できる場所

そんなモヤモヤを抱えつつ、次に関わったクラウドファンディングは、探究学舎の寳槻泰伸さんのMakuakeへのチャレンジでした。

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探究学習を広げていきたいと考えていた寳槻さんと中野のコーヒーショップで会い、どんな方法があるのかを話し合いました。

その中で、寳槻三兄弟が、すべて高校に行かずに京都大学へ合格したことや、お父さんの独特な家庭学習のことなどをうかがっているうちに、寳槻家の家庭学習の物語を発信していくことで、道が開けるような気がして、「その物語を書いて発信してみたら?」と提案しました。eboard物語の経験があったので、物語の持つ力が、寳槻さんの未来を切り開くのではないかと思ったのです。

そんなわけで、寳槻さんがStory.JPにはじめた連載「強烈なオヤジが高校も塾も通わせずに3人の息子を京都大学に放り込んだ話」は、寳槻さんのストーリーテラーとしての抜群の才能と、内容の面白さであっという間に大人気となり、書籍化が決定し、書籍もベストセラーに。

このときに感じたのは、自分の価値を自分で知ることは難しいけど、フィードバックを送ることによって価値に気づくことができると爆発的な創造が生まれる可能性があるのだということでした。

そのことに気づいてから、クラウドファンディングを、覚悟を決めて一歩を踏み出そうとしている人たちと共創できる可能性がある場所として認識できるようになってきました。

クラウドファンディングを通してできあがるオンラインコミュニティ

3番目に関わったのは、アーティストのスギオカカズキさんがCampfireで挑戦したクラウドファンディング。

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スギオカさんとは、このプロジェクトの1年ほど前に知り合い、緩やかに縁を紡いでいたのですが、スギオカさんが長年勤めていたデザイン会社を辞めて起業したところに並々ならない切迫感を感じ、応援したいと声を上げました。

スギオカさんの古くからの友人である森幸代さん、南圭介さんにも声をかけ、スギオカさんの「パールへの道」という連載とシンクロさせながら、それぞれが想いを綴っていきました。

連載にシンクロしながら自分の想いも書いているうちに、自分の中に抑えていたいろんな想いが溢れてきて、何とかしてあげたいなという気持ちが強くなってきました。「反転授業の研究」のメンバーを中心に応援してくれる人が増えてきて、オンラインで「反転授業・カードゲーム・世界平和」というテーマでダイアログをやったりしました。

それで、結果はというと、プロジェクト不成立だったんです。

でも、そのときに、ある考えが浮かびました。

ここに集まってきた支援者たちが力を合わせれば、スギオカさん一人が暮らせるようになるくらい、何とかできるんじゃないか。

そう考えると、むしろプロジェクト不成立だったことのほうが正解だったような気さえしました。

早速、Facebookグループ「青い街収益化プロジェクト」が立ち上がり、そこから、マイシンボルアートなどのサービスが生まれました。プロジェクトの活動自体が安定した収益を生み出すまでには至りませんでしたが、スギオカさんが安定した収益を得るまでの繋ぎとして、何かしらの支えにはなれたと思います。

この経験を通して、クラウドファンディングを通して生まれるコミュニティのほうが、むしろ価値があるのではないかと考えるようになりました。

ドラマが起これば、未来がやってくる

次に関わったのが、世界をフラットにしたいというロンドン在住の21歳の起業家、エインさんのクラウドファンディングでした。noovo-indiegogo

エインさんと僕は、彼女がインドを旅していた18歳のときからの知り合いで、自由に行きたい人が生きられる世界を創るためには、どんな方法があるだろうかということを、スカイプでよく話していました。

そんな彼女が、突然、Noovoというサービスを始め、クラウドファンディングを始めたので、Noovoを立ち上げるに至った想いを連載で発信していったほうがよいとアドバイスしました。

しかし、彼女が英語で発信していく情報をどのようにして日本の人たちにも伝えていけばよいのか・・・と思っていたら、「青い街収益化プロジェクト」に加わっていた翻訳家の南圭介さんや、英語教師の江藤由布さんがブログの翻訳をしてくれ、エインさんのパワフルなメッセージが次々と広がっていきました。

自分のメッセージが伝わっていることに勇気づけられたエインさんは、ブログだけでなく、様々な動画を作成し、渦はどんどん広がっていき、そこに巻き込まれた人たちのマインドセットに大きな変化をもたらしました。

そのときの様子は、こちらから読むことができます。

ヒエラルキーに満ちた社会をフラットにしていくためにできること

このクラウドファンディングの期間中に、多くのドラマが生まれ、そのドラマが心の壁を壊していきました。

クラウドファンディングが終わったときに感じたことは、

ドラマが起これば、未来がやってくる

ということでした。だから、結果を求めようとしなくてもよいのだ。ドラマが起これば、それで十分なのだと思ったのです。

一緒に未来を創りたい相手を探す

このような経験を通して、より一層、クラウドファンディングに関わるようになっていきました。

単純に支援するだけのときもあれば、もっと強くコミットして応援していくこともありました。

それを決めているのは、次の2点。

(1)自分自身のビジョンとシンクロしているかどうか

(2)自分が作りたい未来を一緒に創ってくれそうかどうか

クラウドファンディングの達成へ向けてともに協力することによって生まれる信頼関係はプライスレスなので、いっしょに共創できそうな相手であれば、積極的に応援したいと考えるようになりました。

そんな想いで応援したのが、ママプレナーの吉田(柳澤)由香さん。

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内に秘めた強い思いを感じる一方で、それがストレートに出てこないことにもどかしさを感じたので、感じていることをダイレクトに発信したほうがよいのではないかというフィードバックを送っていきました。また、SNSでコメント付きでシェアしたり、ブログに記事を書いたりして応援していきました。

結果は、最終日にクラウドファンディング達成となり、喜び合うことができました。

クラウドファンディングを通して、女性の新しい生き方という分野に関わることができるきっかけをいただけたのが、僕にとっては大きかったと感じています。

ここで生まれた縁を大切にして、今後、いっしょに何かを生み出していけたらと思っています。

オンラインコミュニティの力で社会問題を解決できないか?

2015年の段階で、僕がクラウドファンディングに感じていた可能性は、

「共創相手」と出会うことができる

というものでした。

しかし、そこに、新たな可能性が加わりました。

そのきっかけとなったのが、外国ルーツの子どもたちの学習支援でクラウドファンディングに挑戦していた田中宝紀さんとの出会いでした。

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そのころの僕の関心は、社会のパラダイムシフトがどのようにして起こるのかということでした。

社会変革ファシリテーターのボブ・スティルガーさんの影響などを受け、旧体制の利益分配が最初に行われなくなっていく「周辺部」が、体制を頼るのを止めて自分で立ち上がり、バラバラに立ち上がった周辺部が繋がって大きなうねりを生み出したときに、トランス・ローカルと呼ばれる状態が生まれ、パラダイムシフトが起こるというイメージを描いていたんですね。

そんなときに、補助金を打ち切られた子どもたちの学習支援のために、猛烈なアウトプットをしていた田中さんを見て、これは、まさしく「周辺部が立ち上がった現象だ」と感じたのです。

日本の規格に適合した労働者を大量生産するための教育システムの中では、外国ルーツの子どもたちは、ひたすら不利な競争を強いられることになりますが、その教育システム自体に疑問を投げかけ、個性を重ね合わせて共創しようとしたときには、彼らの多様性は可能性の宝庫に他なりません。

そのときに書いた記事はこちら

外国にルーツを持つ子どもたちへの支援が未来の教育へのヒントになる

田中さんの情報発信と、今までクラウドファンディングに関わって来た経験とが一気に結びつき、新たなアイディアが生まれました。

それは、

覚悟を決めて「周辺部」からクラウドファンディングで発信し始めた人と、その想いにシンクロした支援者とがオンラインコミュニティを作り、そこで、集合知→価値創造→価値提供のサイクルを回しながら、ボトムアップの動きを生み出し、自分たちの力で課題解決をしていく

というアイディアでした。

一見すると単なる夢物語として受け止められてしまいそうですが、これは、「反転授業の研究」で実際に生まれたものであり、そのエッセンスを抽出して再現することができれば十分に可能なことであるように感じました。

クラウドファンディングの支援者の方たちは、お金を支援するだけでなく、口々に「微力ながら、力になりたい」とコメントしていました。

この微力を受け止める受け皿があり、それをコーディネートして動きを生み出すことができれば、何かが動くはずだと思いました。

そこで、田中さんと話し合って、オンラインコミュニティを作りました。

多文化共生時代の学びを考えよう

トランジションタウンやコクリプロジェクトのような自己組織化的な活動を支援者のオンラインコミュニティで引き起こすためには、対話が必要だということで、Zoomを使ったオンラインワールドカフェを実施しました。

そこから、「母語で学べる動画コースのプラットフォームを作る」という第一歩が見えてきて、今、ゆっくりと動いているところです。

出現しつつあるクラウドファンディングの新しい価値

結局、僕が何を言いたいのかというと、もし、次のようなステップを再現可能な形で回すことができたら、世界が変わるかもしれないということです。

(Step 1) クラウドファンディングで想いを発信する。

(Step 2)想いに共感した支援者とオンラインコミュニティを作る。

(Step 3)ファシリテーターが安心安全の場を創り、フラットかつ協力し合える関係性の質を高めていく。

(Step 4)Zoomなどで対話を繰り返し行い共通ビジョンを創っていく。

(Step 5)集合知→価値創造→価値提供のサイクルを回して収益化し、活動を持続可能なものにしていく。

このサイクルが回れば、すべての人の中に眠っている本来のエネルギーが噴き出してきて、それを利用できるようになり、多くの課題を解決できるようになるのではないでしょうか。

トップダウンで上から降りてくるかどうか分からない支援を待つのではなく、身近な人や、オンラインで繋がった国内外の人たちと、関係性を築きながら、集合知によって解決策を見つけ、想いに基づいた行動によって価値を生み出しながら、世界を変えていくことができるのではないでしょうか。

このような視点で考えると、クラウドファンディングを達成できるかどうかは必ずしも本質的な問題ではなく、達成を目指して引き起こされる様々なドラマこそが大事で、そのドラマが人と人とを結び付け、その後のコミュニティ形成の核となるのではないかと思います。

そして、その核を、粘り強く意味のある活動へと繋げていく知恵こそが、成功のカギを握るものです。

いろんなことに実験的に取り組みながら、集合知へアクセスするための知恵を、共に学んでいきましょう。

学びのチャンスは、いくらでもあります。

あなたとの共創を待っているパートナーは、クラウドファンディングでいくらでも見つけることができますから。

 

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