反転授業の研究

反転授業との出会い

2005年に「田原の物理」の動画講義を配信するフィズヨビをスタートして以来、フィズヨビは順調に成長してきた。

でも、2012年頃から、世界の潮流が大きく変化してきた。

アメリカでKhan Akademyや、MOOCsが誕生し、教育Youtuber達が講義動画をYoutubeにアップロードし始めた。

そんな中、動画講義と教室での活動を組み合わせたブレンディッドラーニングのほうが、対面だけ、または、オンラインだけよりも学習効果が高いという研究結果と出会った。ほぼ同時に、「反転授業(Flipped Classroom)」や、「反転学習(Flipped Learning)」という言葉と出会った。

flippe-class

今やっていることをもっと進化させることができるのであれば、勉強してみようと思った。やるなら、誰もやっていないときに始めようと思い、すぐに「反転授業の研究」というブログを立ち上げ、Facebookグループを作り、動画配信の塾や編集者、教育系システムの開発者など、反転授業に興味を持ちそうな友人に声をかけ、海外の文献などを読みながら、オンラインで読書会を始めた。

反転授業の研究ブログ

「反転授業の研究」Facebookグループ

 

そのときのメンバーの共通した問題意識は、

「動画講義の価格が限りなくゼロになる時代に、動画講義を販売している我々はどんな価値を提供できるのか」

というものだった。

時代の変化に危機感を感じて、生き残るための方策を探していたというのが正直なところだった。

参加者数名の勉強会を8回行ったが、教室での活動がイメージできず、どんな価値を提供できるのかも見えてこなかった。

 

「反転授業」の大きな波が来た

その後、「反転授業の研究」グループの活動は、いったん休止状態になり、思い出したときにブログを更新し、Facebookに投稿するだけの状態が続いた。

そこから再び活動が活性化するきっかけになったのは、アクティブラーニングの実践者、小林昭文さんとの出会いだった。

2013年の夏、東京に出張することになり、仕事関係でミーティングする相手を探していて、ネットで「グループワーク」というキーワードで検索していたときに、はじめて「アクティブラーニング」という言葉に出会った。そのときまでアクティブラーニングという言葉を知らなかった。

反転授業のことを学ぶのに、海外の文献ばかりを見ていて、日本でずっと以前からグループワークをしている人たちがいるということを知らなかったのだ。

当時の僕は、反転授業とは、「動画講義とグループワークを組み合わせて学習効果を上げるもの」といった程度の理解で、学習効果というのは、言ってみれば偏差値を上げるということだと捉えていた。自分自身は河合塾などで10年以上講師として働いてきて、偏差値を上げることは得意だと思っていたし、動画講義を使った取り組みもしていたから教育の最前線にいるつもりだった。

だから、小林さんのブログを見つけて、その記事を読んだときの衝撃は大きかった。

小林さんのブログ 授業研究AL&AL

そこには、社会で生きるために教師は何を伝えなければならないのかという視点からスタートして、生徒が主体的に学ぶようになるために教師がどのような役割を果たすのかということが掘り下げて書いてあった。

それをきっかけに、「偏差値を上げるための授業」というものが、もっと大きな枠組みで考えたときにどのような意味を持つのかというメタな視点が、自分の中にはじめて生まれた。

その後、小林さんにメールを送り、スカイプで話をうかがうことができ、それをきっかけに小林さんが「反転授業の研究」グループに加わった。

小林さんのFacebookの投稿を見たアクティブラーニングの実践者の方たちが、次々とグループに参加して下さり、わずか10名ほどだったグループの人数が一気に増えた。

 

アクティブラーニングのことを学びたい!

 

と強烈に思ったので、WizIQを使ったオンライン勉強会をやりましょうと提案し、ブログに申し込みページを作った。

その数日後、事件が起こった。

佐賀武雄市で、市を挙げて反転授業に取り組むことが決まり、そのことがニュースや新聞で大々的に報道されたのだ。

「反転授業」というキーワードと初めてであった人たちが、Googleで検索すると、僕のブログ「反転授業の研究」が一番目にヒットしたため、無料のオンライン勉強会のお知らせを見た人たちが、次々と申し込んできたのだ。

平日の夜、10時からの勉強会に、110名が参加し、熱気に包まれた勉強会が始まった。

登壇者は、

小林昭文さん(現在 産業能率大教授)

横山北斗さん(関東第一高校 数学教諭)

芝池宗克さん(近畿大学付属高校 数学教諭)

の3人。

WizIQのチャットボックスに、目で追えないほどの書き込みが流れた。何かが起こっているのは分かったが、何が起こっているのかは分からなかった。

hanten01s

 

その後、毎月のようにオンライン勉強会が開かれるようになり、

・アクティブラーニング

・動画講義

・授業設計

・学習効果測定

・参加型組織

・学習する組織

・ファシリテーション

・生徒が語る反転授業

 

など、様々なテーマについて学んできた。2015年4月現在までに実施したオンライン勉強会は17回である。

また、その中で浮かび上がってきた重要なテーマについては、有料のオンラインワークショップを開き、1か月かけてオンラインで学び合いをするという活動も定着してきた。

3つのキーワードが結びついて使命感が生まれた

反転授業と出会った当時の僕は、正直言って、社会と教育の問題について何も考えていなかった。

自分の仕事がうまくいくことだけを考えていた。

しかし、Facebookグループの意識の高い人たちと接して、「反転授業とは何か」という問いについて考えていくうちに、マインドセットが大きく変化していった。

 

他人と交流するということは、どういうことなのか?

 

ということに興味が湧き、ワールドカフェなどの対話について学び始めた。

そこで出会ったのは、自己組織化という言葉。

これは、僕が20代のほとんどを費やして取り組んだ研究テーマだった。

この言葉に再び出会ったとき、教育+IT+自己組織化という自分が全力を傾けてきた3つのキーワードが、「反転授業の研究」の運営という仕事で一点に交わるのを感じた。

 

オンラインコミュニティでの対話によって集合知が自己組織化すれば、教育を変えていくことができるかもしれない

 

このアイディアに、僕は心の底からワクワクした。これは、自分がやるべきことだという思い込みに近い確信が生まれた。

自己組織化と結びついたことで、自分が過去に蓄えたナレッジが使えるようになり、頭が一気に活性化した。

 

自己組織化というのは、アクティブな相互作用により、構造や機能がボトムアップに生まれること。

それが起こるための様々な条件を考えていくと、グループの運営方針をどのようにしていかなければならないのかが見えてきた。

 

トップダウンではなく、ボトムアップにしていくためには、関係性をオープンでフラットにしていく必要があり、それを保証するためにグランドルールを設定した。

そして、ささやかな動きであっても、ポジティブな動きにフィードバックを送って、その動きを大きくしていくようにした。

正のフィードバックと、フラットな関係性を土台にしたアクティブな場こそが、自己組織化が起こるための必須条件だからだ。

 

また、そのころ、組織コンサルの鈴木利和さんの参加型組織の考え方や、「学習する組織」に触れ、大きな影響を受けた。

 

社会のピラミッド構造の存在を意識するようになり、その形成に教育がどのように関わってきたのかということを把握できるようになった。そして、トップダウンで降りてくる権力の矢印を教育現場で逆向きに反転させていくことこそが、反転授業の意義なのではないかと思うようになった。

社会構造についての理解が深まると同時に、使命感が強まっていった。

鈴木さんが、分割統治のビデオで話している問題点を共有した。

怖れを起点にして行動すると孤立が高まり、ピラミッド構造に従属してしまう。一方で、ワクワクを起点にして行動し、自分をオープンにしていくと助け合いの輪が広がり、希望のサイクルが回りだす。 集合知を自由に生み出すことができるようになり、自分たちで価値創造することができるようになれば、ピラミッド構造に従属せずに、自分らしく生きていくことができる。

怖れのサイクルの矢印を反転させて、希望のサイクルを回していくことを、僕も含めて学ぶ必要があると思った。

 

それまで自分をオープンにしてこなかった僕にとって、オープンにしていくことは簡単なことではなかったが、ファシリテーションについて学んでいく中で、自分をオープンにしてメンタルモデルを作り変えていくことの重要性を強く感じるようになり、少しずつオープンにしていった。その結果、自分の周りに渦が生まれたり、近くの渦に巻き込まれたりするようになった。

 

グループの中に様々な渦が生まれ、僕自身もその中に巻き込まれるたびに、たくさんの気づきが生まれ、マインドセットが変容していった。

わずか2年で、僕のマインドセットは、ほとんど別人だと思えるくらいに変わってしまったような気がする。

僕だけじゃなく、渦に巻き込まれた人たちも、どんどんアクティブになっている。

みんなで一緒に成長している感じ。

これまでに体験したことのないような学び方だ。

 

これと同じことを、教室で引き起こしたらどうなるだろうか?

 

必ずできるはず。

そのためには、教師が勇気を持って、教室をオープンでフラットにしていく必要がある。

権力によって生徒を支配するのではなく、お互いが納得するグランドルールを設定し、それを守るように促しながら対話によって学びを促進していく。

教室の中に、頻繁に渦が生まれるようになれば、生徒たちはぐんぐん成長していく。

一方向的に知識をインストールする時間は、渦が生まれるのを妨げるから、動画にして教室の外に出してしまおう。

それが、反転授業をやる一番大きなメリットなんじゃないかな。

オンラインコミュニティの経験は、そういうイメージを僕に与えてくれた。

 

境界を乗り越えていく参画型の学び

勇気を持って踏み出した小さな一歩を見逃さずにお互いにフィードバックを送っていくと、だんだんと大きな一歩を踏み出せるようになってくる。

どんどん場の温度が上がってくる。

そうなると、教室を踏み越え、役割を乗り越え、外側に出ていけるようになる。

参画型の学びがスタートする。

このことを教えてくれたのは、京都精華大学の筒井洋一さん。

自分にとって一番必要な時期に、必要な人に会えた。

「反転授業の研究」も「フィズヨビ」も、運営ボランティアという媒介者に参加してもらい、教える側と教わる側の境界をあいまいにした。

境界を乗り越えてどんどん出てきてほしい。

インターネットを利用して、国境も超えて学び合いをしよう。

それが、よい未来を創ることにつながっていると確信している。

 

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