2017年ころから、頭に浮かんでいる言葉がある。
それは、
集合知的特異点
という言葉。
これは、世間に広まっている言葉じゃなくて、僕が創った言葉。
特権を持っている場所で価値が作られ、パッケージ化されて、価格がついて、それを手に入れるためにお金が必要だから、お金のために我慢して働くというサイクルから抜けていくための方法について、ずっと考えていて、ある日、この言葉が降りてきた。
AIが人間の知性を超える日が、「技術的特異点(シンギュラリティ)」と呼ばれて、多くの人に認知されているという状況について考えていて、
「そんなことよりも、価値創造の源泉が転換するほうが大きいやん!」
と思ったのがきっかけ。
秘匿的な情報にアクセスできる特権が価値創造の源になっている状況は、インターネットによるフラット化が進むにつれて崩壊してきた。情報格差を元にしたビジネスは、次々に価格破壊が起こっている。
変わって出てきたのはビッグデータとAIを価値創造の源にしようとする状況で、GoogleやFacebookに代表されるグローバル企業が、新たな特権を手に入れつつある。多くのプラットフォームが、血眼になってデータをかき集め、そこから価値を生み出そうとしている。
でも、僕は、その先の世界を見たい。
特権を持たない「普通の人」が、繋がりあったコミュニティにおいて、共創や自己組織化によって集合知による価値創造が起こっていき、その価値が、特権を持っているところが生み出す価値を超えるとき、人々の世界観と行動原理が、根本から転換するだろう。
世界の中で生きている物語が転換するだろう。
それは、真の民主主義がやってくる日とも、言えるかもしれない。
それは、自分たちで生きる意味を創り出し、自分たちでそれを実現することができる世界だ。
僕は、その日がやってくることを願っているので、そのお祝いの日を、「集合知的特異点」と名付けて、みんなの意識をそこに向けて、プロセスを促進したいと思っている。
「集合知的特異点」という言葉が広まっていくほど、人々の意識は世界観の転換へと向かい、そのお祝いの日が加速度的に近づいてくるだろう。
生命的なプロセスの進み方は、生成的であるがゆえに予想できない。ただ、自然の摂理に沿って進んでいくだけだ。
ただし、はっきりと分かることもある。
現在の現実を支えている世界観が機能不全になるほど、その世界観を離脱して新しい生き方を模索する人が増えてくるということ。
だから、現在の世界観の機能不全化をエネルギーにして、新しい世界観が生まれてくるとも言える。
絶望が源になって、希望が生まれてくるのだ。
現在の世界観が猛スピードで機能不全に陥っている様子を見ると、集合知的特異点の到来は、意外と早いのかもしれない。
集合知的特異点を迎えるために必要なものは、次の3つだ。
1)共創や自己組織化の原理への理解の深まりと実践(生命論の哲学、ティール組織、コミュニティの自己組織化など)
2)共創や自己組織化を、誰もが体験を通して学べる環境(対話型のオンラインワークショップ)
3)共創や自己組織化を支えるテクノロジーの進歩(オンラインコミュニケーション、ブロックチェーンなど)
僕は、与贈工房というリモート組織で、自己組織化を生きることを試しながら、原理を探求している。
また、自己組織化する学校という450人のオンラインコミュニティで、新しい学び方を生み出そうとしている。
Zoom革命というプロジェクトでは、オンラインコミュニケーションを地球の神経回路として使えるようにするために、使い方のアップデートを重ねている。
これらは、世界観を変えることで、世界を変容させていくための実験場。
与贈工房は、原理の探究に、自己組織化する学校は、学び方に、Zoom革命は、テクノロジーに、それぞれフォーカスしている。
これらを通して、世界の片隅(「ローカル」)で、世界のパラダイムシフトの普遍的なプロセスを追求している。
あらゆる場所から普遍性に繋がることができるが、世界の片隅(ローカル)ほど、現在の前提を問い直していきやすい。
そして、普遍性に繋がるほど、時代の精神でシンクロしたコミュニティと出会う。
お互いに学びあうことにより、よりプロセスの普遍性に気づいていく。
このようにして「ローカル」の活動が、世界のパラダイムシフトの普遍的なプロセスによって共振共鳴して繋がりあっていく「トランスローカル」こそが、集合知的特異点へ向かう道。
世界中で生まれた実践コミュニティ同士が時代の精神で同期して繋がりあって、うねりを生み出すためのコミュニケーションのテクノロジーは、Zoom革命で開発済みだ。
コミュニティにおける共創や自己組織化によって生成される新しい意味が、すでに、世界のナラティブを変え、世界観を変えつつある。
現在の世界観の機能不全化をエネルギーとして取り込み、新しい物語が生まれる速さが加速している。
時代の変化が加速すると、消滅と生成の速度が加速する。
旧構造は、すごい勢いで消滅していき、新しい構造があっという間に出現する。
今は存在していないものが、気がつかないうちに、次々に生まれてくる。
それらの多くは、今の現状の機能不全をキャッチして、生まれてくるのだ。
世界のこのような激的な変化は、僕たちの想像の域を超え、どんな特権的な位置にいる人にも予想できない。
だから、暗い未来しか想像できなくても心配ない。
その未来予想は、当たらない。
絶望は、希望に繋がっている。