時代が動くときには、分かりやすいサインがあるものです。

たとえば、2013年の夏、現在、会員数4000人を超える「反転授業の研究」が、まだ20数名だったころ、夜10時からの無料オンライン勉強会に110名が集まったんです。

「反転授業」とか「アクティブラーニング」が、まだまだマイナーだったころだったので、

110人

という数字にびっくりました。

そして、時代は変わるんだと実感しました。

その後、5年間のうちに、コミュニティの数は、20数人から4600人へと増え、アクティブ・ラーニングは、時代のバズワードへとなっていきました。

後から振り返ると、あのときの「110人」のインパクトが、時代の変わり目を示すサインだったのです。

それと同じような衝撃を、今回、感じています。

『組織開発の探究』のオンライン読書会を、著者の一人である中原淳さんがやりますと呼びかけたところ、なんと定員の400人があっという間に満員御礼になりました。

中原先生のブログ記事はこちら

「大人の学び」を阻害する「5つの壁」を打破せよ!:日本初400名が参加する「オンライン読書会」を実施!

 

勉強会を主催しているダイヤモンド社の藤田さんも、中原先生も、「手伝いますよ~」と気軽に声をあげた僕も、申し込んだ方も、

400人

という数字にびっくりしていると思います。

そして、これは、間違いなく時代の変わり目を示すサインですね。

「オンライン読書会に400人が集まる時代」が始まったのです。

それは、どんな時代なのでしょうか?

コンテンツを消費する時代から、共創体験を求める時代へ

2004年に出版された『価値共創の未来へ』の中で、C・K・プラハラードらは、顧客と企業の共創(Co-Creation)へと時代が移り変わっていく未来を予想しました。

彼らは、インターネットによって情報を持つようになった消費者は、受け身の立場を捨てて積極性を示し、互いの結びつきを強めていることに気づきました。そして、今後、企業が中心となって価値を創造して消費者に提供するという産業体系が崩壊することを予見したのです。

プラハラードらは、従来の価値創造システムが崩壊後にやってくる新たな価値創造の枠組が、「顧客と企業の価値の共創」だと考えました。

今回、オンライン読書会に400人集まったという現象が示すことは、出版社や著者が価値創造して一方的に読者という消費者に提供するモデルから脱却し、積極的に行動する読者が、出版社や著者と共に新しい価値を共創するモデルへのシフトが始まったサインであると考えることができるのではないかと僕は感じています。

規格化×大量生産の時代から、個別化×共創の時代へ

消費者が受け身の立場を捨てて積極性を示し、お互いの繋がりを強めると、集団に多様性が生まれ、かつ、それらが変化していく速さが増していきます。

かつて、国民の多くが同じテレビ番組を見ていた時代には、「均質な大衆」が存在し、そこへ向けた商品を開発していくことが可能でした。

しかし、多くの人がテレビを見るのをやめ、お互いのFacebook投稿やブログ記事を読んで情報を得るようになって来ると、「均質な大衆」というものが存在しにくくなり、商品開発のターゲットを特定するのが難しくなっていきます。また、物質的な豊かさが満たされている現在、私たちは「自分の存在の意味」を感じられるような個人的な体験を求める傾向があると思います。

規格化×大量生産のやり方で作った商品を、「均質な大衆」へ販売していく時代から、個人が自分らしい体験を求めて相互の繋がりを強めていき、個別化×共創で生きる意味を見出していく時代へと移り変わるにつれて、産業体系は、おのずから次のように変化していくのではないかと思います。

 

価値創造のパラダイムが変わることで、新しく生まれる仕事

価値創造の源が、企業の上層部から共創コミュニティへ移動すると、無くなっていく仕事がある一方で、新しく生まれる仕事があるでしょう。

Zoomが登場したことで、オンラインのコミュニケーションの質が大きく改善し、オンラインコミュニティで共創が起こりえるだけの信頼関係を構築しやすくなりました。

オンラインの共創コミュニティをどのように作り、運営するのかが、企業にとって非常に重要になるでしょう。

新しく生まれる仕事としては、

・オンラインファシリテーター

・オンラインコミュニティマネージャー

・オンラインワークショップデザイナー

などが考えられます。

私が代表を務める「与贈工房」では、パラダイムシフトを見越して、このような仕事を開発しています。

また、オンラインコミュニティでの交流が当たり前になると、オフィスに集まって仕事をする必要がないのではないかと考えるようになります。

「オフィスに集まる」という制約を外して完全リモートになると、国内外から優秀な人材を雇用することが可能になります。育児や介護などで働き方に制約がある人が働くチャンスが生まれたり、海外在住でビザの関係で働けない人がプロボノとして関わることができたり、実は、メリットがたくさんあります。

私たち「与贈工房」は、2017年にギルド型のリモート組織としてスタートし、6か国から20数名が集まって一緒に働いています。

ずっと一緒に働いているのに、海外在住のメンバーの中には、まだ会ったことのない人もいます。

代表の私自身も、海外在住で働いています。

そういう働き方の人が増えるにつれて、集合型の人材育成は困難になっていき、人材育成のオンライン化が進んでいくでしょう。

私たち自身が、すでにそうなっているので、

共創体験の提供×人材育成のオンライン化

を実現するために、学習者中心のオンライン学習環境を整え、ラーニングファシリテーターの支援の下で、経験学習サイクルを回して学び続ける人材育成モデルを提唱しています。

そのアイディアを2017年にウェビナーでお話しました。

 

さらに、今回のオンライン読書会で扱っている『組織開発の探究』に関することですが、組織がグローバル化するにしたがって、組織開発の手法にもオンラインコミュニケーションの活用が不可欠になってきます。

・AI(アプリシェイティブ・インクワイアリー)

・OST(オープンスペーステクノロジー)

・ワールドカフェ

・フューチャーサーチ

など、組織開発に用いられるワークショップ手法を、オンラインで実施する「リモート組織開発」も、新たに生まれる仕事になるでしょう。

OSTやワールドカフェのオンライン化は、すでに実用段階に入っており、大規模なものも含め、何度も実施しています。

また、現在、日本でAIを牽引しているマックス渡辺さん、香取一昭さんと共に、リモートAIの開発を進めています。

ODNJ(Organization Development Network Japan)には、OD×テックという分科会が立ち上がり、その中で「リモート組織開発」は重要なテーマとなっています。

5月22日のODNJのイベントでは、私も海外から発表させていただきます。

出版業界の未来予想

今回のオンライン読書会に400人が集まったことは、時代は「価値共創」のほうへと重心を移しつつあるサインかもしれません。

それを支えるインフラが、500人で同時に繋いで、小グループに分かれて対話することが可能なZoomや、それと組み合わせて使うことができる様々なプラットフォームです。

これまでには不可能だった協働的な学びを可能にするインフラや、共感で繋がりあうオンラインコミュニケーションを可能にするインフラが2016年ころから急激に整ってきたのです。

そのような時代背景の中、読書体験は、次の1)⇒2)⇒3)と移り変わっていくのではないでしょうか?

1)書籍を購入して読む。

2)同じ書籍を何人かで一緒に読み、オンライン読書会で対話する。(協働の学び)

3)関心の近い人たちとコミュニティを作り、様々な本で読書会を行う。(個人的な共創体験)

これらに、今回のように、著者が加わることで、読者からのフィードバックからヒントを得て、新たな書籍を執筆していくという動きが生まれると、さらに、共創体験の価値が高まっていくでしょう。

また、私たちの共創によって生まれた本だということで愛着が湧き、コミュニティメンバーを中心に確実に売れていくことから、出版社は、新刊を出版するリスクを抑えることもできるでしょう。

このような世界観を実現するためには、

・オンライン読書会ファシリテーター

・読書会コミュニティマネージャー

といった新しい仕事が必要になります。だから、私たち「与贈工房」は、主体的に自分を生きる人たちが、イキイキと生きられるような社会を作るために、新しい仕事を創り出しています。

「コミュ読ファシリテーター養成講座」についてはこちら

出版社が持つ書籍と著者ネットワークは、オンライン読書会や読者コミュニティとかけ合わさることで、コミュニティの文脈で新たな価値を持ち、再定義されていくのではないでしょうか。

また、これらは、人材育成のインフラとしても、再定義されていくのではないでしょうか。

 



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